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それは正文にかゝりつけの患家だつた。
と、鬼倉はすつかり他意のない様子で答へた。
房一は擽くすぐつたさうな顔をしていた。
彼女はその表情を少しもくづさずにすつと引き下つたが、間もなく帰ると、
練吉は立ち上つた。正文の代りに往診をたのまれてもあんなにいやいやだつたにもかゝはらず、今の彼はまるで打つて変つた気軽るさだつた。
練吉の口振りが意地の悪いものだつたにかゝはらず、今泉はむしろ話のきつかけを得たことを喜んでいる風だつた。
「獲とれましたか」
小谷は仰山ぎやうさんな表情になつた。
「何かの、それは」
徳次は、両手に海苔まきとゴマをまぶした握飯と二つとも慾ばつて持ち、紙の袖をいやといふほどたくし上げ、冠をどこかへ脱ぎすてたので、いがくり頭ときよろりとした眼とを何かむき出した風に目立たせながら、足を踏んばつて云つた。
「それをよこしたまへ。二足なんていらんよ」
小谷は酔つて来たのだらう、何度も同じ手真似をして見せた。
しばらく黙つていた後で、房一は
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