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    彼はそれを云ひに来たのだつた。

    「あ、いゝ、いゝ。なんでもありやしない。今すぐ行かう」

    鬼倉は一瞬、相手を地着きのごろか何かと思つたらしい、一種の殺気をひらめかした。

    房一は白シャツを着た小柄な大工と並んで立ちながら、玄関を眺めて云つた。

    「早く早くつたつて、もうお支度はちやんとできてますわ。あなたが遅くかへつて来といて――」

    恐らくその一かたまりでは赤山廃坑の話がさつきから賑かだつたのだらう。さう勢ひこむやうな調子で喋つていたのは富田といふ仲買だつた。

    と、何か威勢よく云ひかけたときだつた。小谷は急に聞耳をたてた。小谷ばかりではない、房一も――半鐘が鳴つていた。たしかに!それは、はじめ三連打を二度ほど、ちよつと途切れ、次には聞えにくいほど鳴り、そして急に勢よくつゞけさまに鳴り出した。ちやうど、それは焔の燃える様子と緩急を合せたやうに、まざまざと目に見せるやうに響いた。

    鍵屋の隠居神原直造は老来なほ矍鑠と云つた様子だつた。

    「なに、訴訟?」

    「ね、君」

    「あゝ、さうか。ふうん」

    小谷は不安げに呟いた。

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