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日は高く上つて、噎むせるやうな温かい空気が、時々、風の工合で河原の方からやつて来た。徳次も切り上げて来た。三箇の魚籠びくを中にして、頭を並べて獲物を見せ合つた。
胡坐をかいた道平は今膝小僧までまる出しにしていた。それも日に焦げている。
印袢纏の背の高い男がその時、半シャツの男に向つて目くばせをした。
「どこの帰りかね」
「はあ、見て参ります」
徳次は気が抜けたやうに、口のあたりをもごもごさせるきりだつた。
徳次は房一がそれなり立去つて行つたものとばかり思ひこんだ。だからおれは知らん振りをしたかつたんだ、こつちでやきもきしても先方では毛ほども思つてやしないんだ。ちよつと頭を下げる、今日は、はい左様なら、だ。畜生め。――と、徳次は相手がちよつと自転車から降りただけでもうすつかり忘れてしまふところだつたこれまでの心外さをもう一度よび戻さうとつとめながら、口惜しさうに、半ばは呆然として房一の行つた方を眺めていた。
「なに、訴訟?」
房一は慌てて、診察にかゝつた。その後で彼は云つた。
「連れっ子をして行ったです。その子供がまたチブスになって、……」
と、鬼倉は意外に思つたらしい。小首をかしげていたが、
「それとも、あれかね。やつぱり日露戦争のときみたいに、船で吉賀の先の浜へ上つてそれからやつて来るんかね」
と、突然房一の肩を押へて云つた者がある。いつのまにか、練吉が傍に来ていたのだ。彼は酒の酔ひもさめたと見えて、興奮し、そのために稍強きつい、輪郭のはつきりした顔立ちになつて、一心に土手の方を注視していた。
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