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「一つ着て見せたらどうです?高間さんにはきつと似合ひますよ」
だが、急に機嫌をとり直した。そして、徳次が彼の口から聞くことでどんな表情になるかを期待しながら、ゆつくり相手の顔を見て云つた。
だが、房一よりも堂本の方がもつと慌てていた。彼はいきなりそこに痩せた身体をしやちこ張らせてかしこまると、
「わたしはね、こいつは割れさうだなと思つたもんでね」と、笏で自分のはいている木沓を指して、
「もう帰つたんかね」
練吉は、癖だと見えて、折角きちんとかぶつて出たカンカン帽をいきなり指で突き上げて阿弥陀あみだにすると、いかにもだらりとした様子で歩き出した。それは、さつき別人の観があつた、てきぱきした、俊敏な医者らしい練吉から、もとの彼に逆もどりした風であつた。
二人はなほ専門的なことを二三話し合つた。それから、どちらからともなく自転車に乗つた。ペタルに足をかけるときに、突然、練吉は心に浮かんだことを押へかねて、叫んだ。
「眼が潰つぶれちまふ――ねえ、先生」
練吉はまだ眼鏡を手にしたまゝ、不自然に大きく見える眼を極端にぱちぱちさせ、ぢつと房一の顔をのぞきこんでいた。彼は今さつき、突然の房一の来訪でよび起されたのである。
「ふむ、ふむ」
「いゝえ、なんの。おれんとこへなんか。――あんたは忙しい身だもの」
彼はもう少しで最も善い友人に向ふやうに考へごとを打ち明けるところだつた。
「どうしなさつた」
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