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「よし。――さうしとかう」
二三度声をかけたが返事がなかつた。すると植込みの向ふの診察所の入口に白い服を着た看護婦の紅らんだ顔がのぞいて、すぐに引きこんだ。と思ふと、どんな風に廻つたのかしれないが、同じ顔が思ひがけなく今度はひよいと突きあたりの壁の横から現はれた。
房一は擽くすぐつたさうな顔をしていた。
「さつき着いたばかりの新聞で見たんだがね、――堀内将軍がいよいよ凱旋されるさうだ」
半ば感心し、半ば疑はしさうに、彼は指を自分の眼に向けてみた。
「患者さんですよう」
「あのう、笹井へ往診がございますが」
「今日は士曜日で、半休だからね」
「君に云つとくが、何んだぜ、小倉組の者なんかにかゝり合ひをつけちやいかんぜ」
義母は明日も片づけ仕事が残つているので泊つて行くことになつた。
徳次は急に目くばせをした。
云ひながら、道平はこれ又大いに気にかけていたことがあつさり片づけられてしまつたので、いくらか不服でもあり、手持無沙汰でもあるといつた様子だつた。
「うん、何かア」
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