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    「はゝゝ、でもカワラケにはちがひない、それがかうひよつとね」

    房一は大きくうなづいて見せた。もう獲物は大分前からとまつていた。

    「ね、どこも悪くない。だが、その丈夫な身体の中に虫が巣をつくつとる。いゝかね、心臓病とか腎臓病とかいふやうなものではない。虫を駆除する、つまり身体から出してしまへばあんたの身体はもと通りぴんぴんして来る。悪い虫だが、とつてしまへばよいのだから、他の病気よりは性質はいゝと云ふことになる。――判つたかね」

    「いや、あの晩の、ほんの三二日前です」

    別に会ふ気がなかつたから、と云ふ代りに、

    この時ふと、房一は、何故こんなに相沢が立入つて訊くのか、といふ疑ひを持つた。だが知り合ふとすぐまるで親類か何かのやうに世話を焼きたがる河原町の人達の癖は、房一も家の造作のときにも、その後にも一再ならず見て知つていた。

    河原町の上手を出外れると、やはり一帯は桑畑の中を、路はだんだん上り勾配をましながら川から遠ざかつて行くのだが、左手に迫つている山腹の下方にとりつくと、そこから急に路面も赤土になつて、途中でいくつも屈折した坂路が山を越えて杉倉の方につゞくのである。

    「まだつて、はじまつたばかりですよ」

    風呂にゆつくりとつかつた。

    「あんたは鮒をたべなさるかね」

    「こゝの消防演習をやつたのだ。そんなに騒ぐことはない」

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