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    「今日はほんの御挨拶に上つたので、いづれ又ゆつくり――」

    「さうぢや」

    小谷は不安げに呟いた。

    彼は先だつて房一から全快祝ひに贈られたセルの上下を、仕立下したばかりのものを着こんでいた。夏からふた月あまり寝こんだとは云へ、日焼けの浸みこんだ黒い皮膚の色は容易にとれないと見えて、今もそれが真新しいセルの、明い地色と際立つた対照をなしていた。

    盛子は笑ひながら顔を紅らめた。

    並んで立つと、いきなり

    「心臓は多少弱つているが、大したことはない。――いゝかね、あんたの身体はもともと丈夫な身体だ。ようく診たがどこも悪くはない」

    「徳さん。追鮎は君のといつしよに活かしといてもらはうか――どつこいしよ」

    「ドイツの潜航艇が又イギリスの商船をやつつけたさうですね。――なにしろ海の底をもぐつていて、ぽかつと出てくるんだからねえ、やられた方ぢやさぞおつたまげるだらうなあ」

    練吉の口振りが意地の悪いものだつたにかゝはらず、今泉はむしろ話のきつかけを得たことを喜んでいる風だつた。

    「はゝあ」

    「や、それでは――」

    が、それは徳次であつた。

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